社員が増えたら、いつ人事担当者を置くべき?人数ではなく「仕事量」で判断する
「社員が何人くらいになったら、人事担当者を置いた方がいいですか?」
中小企業の経営者からすると、気になるテーマだと思います。
10人なのか。
30人なのか。
50人なのか。
ただ、私は社員数だけで人事担当者を置くかどうかを決める必要はないと考えています。
見るべきなのは社員数ではなく、
「人事の仕事がどれくらい発生しているか」
です。
例えば、社員50人の会社でも年間採用人数が5人程度で、給与計算や社会保険手続きも外注しているのであれば、専任の人事担当者が1人必要とは限りません。
一方で、社員30人でも年間20人を採用するのであれば、採用だけでも相当な業務量になります。
同じ社員数でも、人事に必要な仕事量はまったく違います。
まず、人事の仕事を分解して考える

代表的な人事業務を挙げると、
- 給与計算
- 社会保険・労働保険などの手続き
- 就業規則や各種規程の整備
- 採用
- 人事制度に関する事務
- 社員対応
などがあります。
しかし、このすべてを社内の「人事担当者」がやらなければならないわけではありません。
例えば、給与計算だけをお願いしたいのであれば、必ずしも人事専門の社員を置く必要はありません。
小口現金や請求書処理などと合わせて、バックオフィス担当者が処理してもよいでしょう。
社会保険手続きや労務の専門知識が必要なら、社会保険労務士に依頼できます。
就業規則や規程類についても、外部の社会保険労務士などと連携すれば整備できます。
つまり、専門知識は外部に持ち、日常的な事務処理は社内のバックオフィス担当者が行うという形でも十分に運用できます。
最初から「人事担当者を採用しなければ」と考える必要はありません。
最初に必要なのは「人事」ではなくバックオフィスかもしれない

創業直後は、社長自身が様々なバックオフィス業務を行っている会社も多いと思います。
請求書を確認する。
給与を振り込む。
社員からの問い合わせに答える。
採用の連絡をする。
しかし、社員が増え、売上を作る仕事や経営判断に時間を使う必要が出てくると、こうした作業を社長自身が続けることが難しくなります。
この段階で最初に考えるのは、必ずしも「人事担当者」ではありません。
バックオフィスの事務担当者を1人置く。
まずはそれでよい会社も多いと思います。
給与計算、勤怠確認、簡単な採用連絡、書類管理など、定型業務を任せるだけでも、社長の時間はかなり戻ってきます。
社員10人を超えたら、専門家との接点を考える

社員が増えてくると、単純な事務処理だけでは対応できないことも増えてきます。
一つの節目になるのが、常時10人以上の労働者を使用する事業場です。
就業規則の作成・届出が必要になるなど、会社として労務上整えるべきものが増えてきます。
このあたりから、私は社内に専門家を雇うよりも、まずは社会保険労務士など外部の専門家とつながっておく方が合理的だと考えています。
税務処理が煩雑になってくれば税理士を利用するのも同じです。
専門家を社員として一人ずつ雇えば、高い固定費になります。
必要な専門知識を必要な時に外部から使う方が、中小企業には合っていることも多いでしょう。
人事事務担当者を置くのは「事務だけでは回らなくなった時」

その後、採用や社員対応などが増え、バックオフィス担当者だけでは人事業務を処理しきれなくなってきたら、人事専任の事務担当者を置くことを検討してもよいタイミングです。
例えば、
- 求人媒体の管理
- 候補者との日程調整
- 面接設定
- 入退社手続きの管理
- 人事制度に関するデータ管理
- 研修の運営
- 社員からの問い合わせ対応
などが積み重なり、他の事務業務との兼務では回らなくなってきます。
この段階でも、いきなり専門性の高い人事担当者を採用する必要はありません。
まずは、人事業務を中心に担当する事務担当者を1名置くくらいでも十分なケースがあります。
必要なのが日々のオペレーションを安定して回すことであれば、まずはその役割に合った人を配置する。
その後、判断や制度設計、外部専門家との調整など、より高度な人事業務が増えてきた時に、専門性のある人事担当者を検討すればよいと考えています。
専門性のある人事が必要になるタイミング

さらに会社が成長すると、単純な事務処理では判断できない問題が出てきます。
例えば、
- 社員との労務トラブルが起きた
- 採用エージェントと採用要件について議論する必要が出た
- 評価制度を作りたい
- 管理職を育てたい
- 人件費をどのように設計するか考えたい
- 社員の離職原因を整理したい
といった問題です。
この段階になると、「処理する人」ではなく、人事として考え、判断し、社長や管理職と議論できる人が必要になります。
また、専門性が必要なのは社内だけではありません。
労務トラブルで社会保険労務士や弁護士に相談する場合でも、相手が判断するために必要な事実や資料を整理し、適切に伝える必要があります。
採用でも同じです。
人材紹介会社や求人媒体の運営会社と話す際に、
- どんな人を採用したいのか
- なぜその人が必要なのか
- 現在どこで採用が止まっているのか
- 何を改善すべきなのか
を整理できなければ、外部業者から提案を受けても、その内容が本当に自社に合っているのか判断できません。
場合によっては、十分な検証がされないまま時間だけが過ぎ、
「今回は採用できなかったので、次の期間も継続しましょう」
という話になってしまうこともあります。
だからこそ、専門性のある人事には、社内の人事課題を整理する力だけでなく、外部の専門家や業者と対等に会話し、必要な情報を出し、提案内容を判断する力も求められます。
ここで初めて、専門性のある人事担当者を採用する意味が大きくなります。
一方で、その仕事が常時フルタイムで発生するとは限りません。
その場合は、外部の人事専門家や外部人事部長を使うという選択肢もあります。
社員50人でも人事担当者が不要な会社はある

例えば社員50人の会社でも、
- 採用は年間5人程度
- 給与計算は外注
- 社会保険手続きは社会保険労務士へ委託
- 人事制度はすでに整っている
- 社員対応もそれほど多くない
という状態なら、専任人事を一人置く必要性はそれほど高くないかもしれません。
逆に社員30人でも、
- 年間20人採用する
- 求人媒体を複数運用する
- エージェント対応が多い
- 入退社が頻繁に発生する
- 研修や評価運用もある
となれば、一人では足りない可能性すらあります。
だからこそ、
「社員が何人になったら人事を置くか」ではなく、「どれだけ人事業務が発生しているか」で判断する
ことが重要です。
採用だけなら、安易に「RPOを入れればいい」とも限らない

採用業務が増えると、RPO(採用代行)を検討する会社もあります。
もちろん、RPOが有効なケースはあります。
ただし私は、「労務は社労士、採用はRPO」と単純に切り分けるのは慎重に考えた方がよいと思っています。
採用では、
- なぜこの会社で働くのか
- どんな社員が活躍しているのか
- 社長は何を考えているのか
- 入社後にどのような役割を期待するのか
といった、会社そのものを候補者に伝える必要があります。
外部サービスが会社を十分に理解していなければ、その魅力を伝えることは難しくなります。
また、ダイレクトリクルーティングの送信業務だけを大量に代行するような使い方では、そもそも採用の根本原因を解決できないこともあります。
採用を外注する場合も、単に作業を切り出すのではなく、何を外部に任せ、何を社内に残すのかを考えることが重要です。
人事担当者を置くタイミングは「仕事量」と「専門性」で決める

人事担当者を置く時期に、社員数だけで決まる正解はありません。
私は、会社の成長に合わせて、
① 社長自身で対応する
→ ② バックオフィス担当者を置く
→ ③ 社労士など外部専門家を利用する
→ ④ 人事事務担当者を置く
→ ⑤ 専門性のある人事担当者を置く
という順番で考えると分かりやすいと思っています。
見るべきなのは、
仕事量がどこまで増えているのか。
そして、その仕事にどの程度の専門性が必要なのか。
です。
「社員が30人になったから人事を採用する」ではなく、自社で発生している仕事を一度分解してみる。
すると、
「これは事務担当者でできる」
「これは社労士に頼める」
「これは社長と専門性のある人事が一緒に考えるべき」
という整理ができます。
人事担当者を採用することそのものを目的にせず、必要な仕事に、必要な人と専門性を配置することが大切です。
そして、社内に人事担当者を置くほどの仕事量はないものの、採用・評価・育成・労務を横断して判断する人が必要になった場合は、「外部人事部長」という選択肢もあります。
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